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ウェビナーレポート:【第11回ウェビナー】第1回~10回ランチタイムウェビナーの総集編

開催日時:2020年07月22日(水) 12:00〜13:00(11:45~入室開始)

コロナ禍で加速する消費者行動などのデジタル化

桑江:アイルランドに本拠を置く総合コンサルティングA社が2020年4月、世界15カ国の約3000人の消費者を対象にした調査によると、新型コロナウイルスの影響で消費者行動のデジタル化が加速したことが分かります。
直近で食料や雑貨をオンラインで購入した人のうち、「オンライン購入は初めて」と答えた人は全体の5人に1人に上り、56歳以上の消費者に限れば3人に1人を占めました。
また、すべての製品・サービスをオンラインで購入している消費者の割合は32%で、感染拡大の収束後も「オンライン購入を継続する」と答えた人は37%でした。これを見ても、新型コロナが消費者行動のデジタル化に大きな影響を与えたことが見て取れるでしょう。
これまでオフラインでシニア対策に取り組んできた企業も、これをきっかけにオンラインに移行するべきではないかと感じます。

出典:アクセンチュア(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000019290.html

前薗:そうですね。

桑江:働き方についても大きな影響がありました。クラウド人材管理システムを提供しているB社が5月に実施した調査では、IT・インターネット業界のリモートワーク実施率は他業種の2倍以上に上り、特に関東圏内では普及が進んでいます。

出典:https://www.jiji.com/jc/article?k=000000069.000030113&g=prt(現在はリンク切れ)

前薗:私も日常的にBtoCの顧客企業とやり取りさせてもらっていますが、ほとんどの業務がオンラインに切り替わっています。不動産のように高額な商品は「インターネットになかなか切り替えられない」という意見が多かったのですが、もはや切り替えなければ売上が立たない状況です。
現在は「中・高年層向けにWeb上でリフォームの案内をしよう」とか「オンライン見学会をやってみよう」といったポジティブな側面を捉えれば、どんどん新しい取り組みが追加されている印象がありますね。

SNS炎上も増加傾向 誹謗中傷の動機は「正義感」

桑江:SNSの動向を見ていくと、2020年1~5月の炎上件数は4月の246件がピークでした。5月は159件に減ったものの、前年同月比では2.6倍に達しています。6月の件数も同様の傾向が見られる印象ですね。
新型コロナ関連の炎上件数が全体の約16%を占めていて、それらの事例には緊急事態宣言に伴う自粛警察などがあります。ネットで炎上させているのは陰湿な人たちで、ストレス発散目的の愉快犯も多いと思われがちですが、誹謗中傷をする一番の動機は「正義感」です。
つまり、当の本人は誹謗中傷だと思っておらず、「自分は正しいことを書いている。悪いのはそうさせている相手だ」と考えています。
誹謗中傷の被害が及ぶ可能性があるのは個人、著名人だけではなく、企業も例外ではありません。その会社の言動が少しでもおかしければ、正義感に基づいてバッシングするということです。

前薗:私が担当している食品メーカーで乳幼児用の食品に異物混入があった際、本当に困っているのは乳幼児を抱える保護者だと思うのですが、結婚しておらず子どももいないような方々が「「許せない」と投稿することがあります。
炎上時は「このアカウントをつぶしてやる」というくらいの勢いで「謝れ」「お前たちは間違っている」などと声高に主張する人が多い印象があります。

桑江:コロナ禍でのSNS動向は全体的にイライラして疲れていて、何が炎上して何が賞賛されるのかの見極めが難しく、正解がないということでしょう。「こんなことで」と驚くようなことが批判されているのが現状です。
「何を発信するのか」だけではなく、「誰が発信するのか」も炎上の要素になっています。例えば、経済的に余裕のあると思われる著名人のステイホームの呼びかけすら、外で働かざるを得ない人からすると批判の対象になってしまうケースもあります。社会的な強者と弱者の分断により、全く悪気はなくても失言や不適切商法、便乗商法と捉えられかねないのが大きな特徴です。
一方で、メディアが大げさに「炎上」と煽っただけで、実際にはそうではないないケースも多くあります。まだまだメディアの影響力は大きいと感じますね。

前薗:コロナ禍でもホームセンターやスーパーマーケットは営業を継続していましたが、特売品を店の前に置いているだけで「そこに人を集めるのか」「感染を強要するのか」といったクレームの電話が鳴りやまなかった例があります。
一方、店員がフェイスシールドをしていると「威圧感がある」と指摘されて、現場の対応が本当に難しくなっています。しかも、これらはすべてSNSに書かれてしまっているので、「どう対応していいのか分からない」というご相談をいただくこともあります。
ある広告会社では、全動画のイベントなどのシーンに「コロナ禍の前に撮影したものなのでご安心ください」と記入したり、店舗で企画を実施する場合は「こういう対策を取っているので安心です」というのを過剰に明示したりして批判から身を守っている印象です。

感染拡大・炎上リスクを下げるために適切な情報開示を

桑江:自社に感染者が出たことによる炎上事例もありました。我々としては、注意喚起の意味で自発的に公表した方がいいと考えています。
その理由は2つで、1つ目は感染者の近隣の住民や職場、同じ公共交通機関の路線利用者など社外の人々も感染リスクが伴う事案だからです。公表することは周囲の感染リスクを下げることにつながるので、企業としての社会的使命を果たすことになると言えます。
2つ目は、沈黙はかえって風評被害を拡大させるリスクを高めるということです。隠していてもあまり良いことはなく、現状では身内である社員に告発されてしまうリスクもないとは言えません。
実際、感染者本人と思われる人物がネット掲示板に「自分は感染している」と書き込み、ネットユーザーが名前や勤務先を特定しようと騒動になったケースもあります。企業としては迅速に正しい情報を公表した方が、感染リスクも炎上リスクも最小限に抑えられるでしょう。

前薗:その通りですね。

桑江:ただし、重要なのは個人情報と公益性のバランスを取ることですね。本来、病気は個人情報に関するものなので、プライバシーへの配慮が求められます。しかし、新型コロナは感染症でもあるので、保健所ではプライバシーを守りながら行動履歴などを開示しています。
開示が遅れると炎上騒ぎになることもあるので、保健所が開示した内容については企業側もリリースを出すべきでしょう。保健所に合わせてリリース内容を決めるのが一番安心ではないかと思います。
新型コロナ関連に限らず、法的な解釈や判断の正しさを主張することも大切ですが、世の中の感情に寄り添ってできるだけ対応することが必要です。自社の顧客が不特定多数の場合は、ホームページに情報を掲載することを意識しておく必要があると思います。

前薗:ショッピングモールや商業施設にテナントで入っていたり、イベントスペースで営業したりしている場合、そこで働く自社のスタッフが罹患した際の情報開示は保健所側、商業施設側と足並みをそろえることが大事です。
どこかが発表したのに自社が遅れてしまうと「隠ぺいしようとしている」と叩かれ、余計な対応に追われてしまいます。

桑江:新型コロナ関連などいわれのないデマで風評被害の的になった場合は、拡散したデマ投稿に対してしっかりとメンションを付けて、あるいはリツイートという形で回答することで、同じツリー上においてセットで読んでもらえます。そうすることにより、デマを否定した投稿だけ閲覧数が伸びないという現象は起こらなくなるでしょう。

前薗:正直、地道に対応するしかありません。過去の事例を見ても「言われたもの負け」というのは防ぎ切れないのが実態です。
ただ、こういう場合は感情論など具体的ではないことが拡散していることが多いので、定量的、かつ第三者の見識を持って否定していくのが比較的有効のように思います。
私が過去に携わった事例では、ペットのアイテムを扱っている企業が自社の製品が悪いかのようなデマの書き込みをされていたのですが、それを否定するために自社と利害関係のない動物病院の獣医師や大学の先生に意見をもらい、それらの方々の署名入りのリリースを打って抑え込みました。
泣き寝入りをせずに、うまく反転攻勢するのが一番重要かと思います。

シナリオを用意し正しくリスクを恐れる

桑江:リスクシナリオをつくるという観点で言えば、業種・業種によって想定されるリスク対応のフローを整えておくことが重要だと感じています。
スタンバイコメントのリリースをあらかじめ用意し、大学や研究機関など速やかに事実関係を調査してもらえるルートを確保しておけば、すぐに第三者の意見を聞くことができます。
その結果に基づいてリリースを出せばより信憑性が高くなるので、新型コロナに限らずそうしたリスクヘッジを用意することが重要でしょう。

前薗:SNSの炎上が増えている中、私自身も息苦しさを感じますが、コロナ禍の中でSNSやオンラインで情報収集する方は増えているので、そこから目を背けることはできないと思っています。
例えば、Twitterは拡散性がありスピード感が求められる情報伝達に向いているなど、それぞれの媒体の特性に合わせた顧客との接触の仕方について計画を立てるべきです。
また、万一のリスクシナリオをつくっておき、何か起こったときはそれに従って粛々と対応できるようにすれば、SNSのメリットを享受してもらいやすいと思います。

出典:https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/64747

桑江:シニア層がネットを使うようになり、さまざまなイベントもオンラインでの開催に変わっていったことで、世の中全体のネット利用時間は増えているはずです。
だからこそ、どのようにリーチしていくかを考えていく必要がありますし、炎上が増えて治安が良くないからといってSNSに手を出さないというのは意味がないと思います。正しくリスクを恐れながら使っていくことを意識した方がいいですね。