レポートCases / Reports

DIGITAL CRISIS RESEARCH INSTITUTE

ランチタイムウェビナー

第18回『フェイクを見極め、炎上を防ぐ盾を持つ』

開催日時:2020年09月16日(水) 12:00〜13:00(11:45~入室開始)

パネリスト

桑江 令(くわえ りょう)

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 主席研究員。 デジタルクライシス対策の専門家として、NHKのテレビ番組に出演したり、出版社でのコラム、日経新聞やプレジデントへのコメント寄稿も担当。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

古田 大輔(ふるた だいすけ)氏

株式会社メディアコラボ 代表取締役。1977年福岡生まれ、早稲田大政経学部卒。2002年朝日新聞入社。社会部などを経て、アジア総局員、シンガポール支局長。帰国後はデジタル版を担当。2015年10月に退社し、BuzzFeed Japan創刊編集長に就任。2019年6月に独立し、株式会社メディアコラボを設立。フリーランスのジャーナリスト/メディアコンサルタントに。その他の役職に、インターネットメディア協会理事、ファクトチェック・イニシアティブ理事、Online News Association Japanオーガナイザー、早稲田大院政治学研究科非常勤講師など。共著に「フェイクと憎悪」など。

ウェビナー参加者の半数超が「フェイクニュース信じた」

桑江:新型コロナウイルスで出回ったフェイクニュースを信じてしまった人は、どれくらいいるのでしょうか。今回のウェビナーに参加してくださっている皆様に、投票機能を使って質問したところ、「信じたことがある」という人は54%でした。このようなウェビナーに参加されている情報感度の高い方々でも、半分以上が信じてしまったということですね。

古田:よくあるのは、企業や社員がフェイクニュースに引っ掛かって炎上するケースです。反対に、何かがきっかけで炎上した事案に寄せられたコメントの中にフェイクニュースが混じっていて、火に油を注ぐ形になるケースもあります。
フェイクニュースと炎上は共通点が多く、主な舞台はどちらもソーシャルメディアです。ネット上にはフェイクな情報があふれていて、それらを見ずにオンラインを利用するのはもはや不可能と言えます。

桑江:総務省が2020年5月、約2,000人を対象に実施した調査結果でも、新型コロナに関して多くの人が「正しい情報を知ることが難しい」と感じています。
また、テレビや新聞の情報は正しいと認識しているものの、SNSに関しては誤情報や誤解を招く情報が多いと感じる人が多かったということです。

古田:自社の公式アカウントや社員がフェイクニュースに引っ掛からないための予防策と、自社に関するフェイク情報を流されたときの対応の準備、自社の発信情報がフェイクとの認定を受けないようにするための事前チェックは、すべて炎上対策に通じます。つまり、フェイクニュース対策は炎上対策に含まれるという言い方もできるということです。

桑江:コロナに関連しては、納豆やニンニクがウイルスの増殖を防ぐというデマがありました。トイレットペーパーが買い占められ、店頭から消え去ってしまう事態も起こったほか、海外では「5Gの電波で免疫力が低下してウイルスに感染しやすくなる」というフェイクニュースも流布されて騒動に発展した例もあります。

炎上のメカニズムは5段階、燃え広がるサイクルが加速

古田:炎上のメカニズムは5段階に分けられます。最初から炎上するものもあれば、想定する読者数を超えて拡散したことで一気に批判が広がる例もあります。企業は想定ユーザーを超えた場合、そのメッセージやサービスは大丈夫なのか考える必要があるでしょう。
新聞やテレビのネットメディア化が進み、ネットに火種が上がってから本格的な炎上に至るまでのサイクルが非常に速くなっているからこそ、事前準備の重要性が高まっています。
炎上のパターンは2種類です。1つは「自分に非がある」とき、もう1つは「相手が積極的に燃やしにくる」という場合です。誤報や不適切な発言など自分に非があれば過ちを認め、速やかに謝罪・削除・修正などで対応する必要があります。
後者のパターンについては、論理的な批判なら堂々と応じて対話のきっかけにすれば、かえって強固なファンをつかめるかもしれません。ただし、ロジカルな相手でなければ、ある程度の批判を覚悟で毅然と対応するか、無視してしまっても良いでしょう。

桑江:総務省の調査では、例え真偽が不明な情報であっても「興味深い」「人の役に立つ」「注意喚起」といった理由で共有・拡散してしまう人が、一定数存在することも分かりました。

古田:覚えておいてほしいのは、炎上参加者の意見が世論と完全に等しいわけではないということです。過激な意見はネットを含めた世論のごく一部でしかありません。ただ、義憤に駆られて寄せられる批判の中には正しいものもあります。聞くべき批判はきちんと聞くことが大切です。

桑江:なるほど。

古田:デジタル時代の企業SNSなどには「どんなコンテンツをどう作るか」「誰にどう配信するか」「情報を受け取った相手とどういう関係性を築くか」という3つの戦略が必要です。良いコンテンツを作るだけではユーザーに届きませんし、動いてももらえないでしょう。どうやって関与を生み出すかを、きちんと考えておかなければなりません。
そして、これがとても重要なのですが、分類・対応の指示命令系統をはっきりさせておくべきです。うまく対応できた企業は大概、その系統がしっかりしています。それができていないと右往左往することになり、新たな攻撃も生んでしまいかねません。

第一に考えるべきは「何のためにSNSをするのか」

桑江:改めて、企業SNSの担当者が日常的に注意を払うべきことは何でしょうか。

古田:第一に考えた方がいいと思うのは、何のためにSNSをするのかということです。ある一定数以上に拡散すると、必ず批判する人が出てきます。全く批判が出ないようにSNSを運用するというのは、拡散されにくくすることにつながりかねません。
批判が全然寄せられないというのは、よほどSNS運用がうまいか、拡散されていないかのどちらかだと思うんですよね。拡散させたいと思うなら、ある程度の批判を招くかもしれないと覚悟しつつ運用すべきだと思います。

桑江:確かに、「炎上は避けたいけれど全く話題にならないのも困る」という企業は多いですね。私もよく話をするのは「どれだけ覚悟をするか」ということです。「SNS上の批判はどこまで許容するかを踏まえて運用すべきだ」と説いています。
それを実践した上で、万一炎上した場合にリカバリーできる戦略があればお聞かせください。

古田:炎上事案は毎日のように起こっています。中小企業が全国的な大炎上をしても、1カ月後にその社名を覚えている人は少ないはずです。炎上の件数が増え、サイクルが短くなっていることを考えると、多くの場合は1カ月もしたら悪名は水に流れていきますから。
もちろん、覚えている人も必ずいます。次はより燃えやすくなっていますし、再び炎上した際の可燃度は高まっているということも考えておいた方がいいでしょう。
基本的には必要な謝罪や修正、対応をした後、ロープロファイルに徹してもう一度運用を始めることがすごく重要だと思っています。

桑江:なるほど。先ほど指示命令系統に関してのお話がありましたが、具体的に良かった例、悪かった例を教えてください。

古田:例えば、大企業に勤めるAさんが個人としてツイートしても、「〇〇会社の人」と見られてしまうはずです。さらに、投稿した内容がAさんの所属先とは別の部署の話題だった、あるいはAさんは大企業の本体ではなくグループ会社の人だったとなると話がややこしくなり、広報部などのマターで統一した対応を取りづらくなるでしょう。
だから、「ソーシャルでこういうものがきたときには、ここで対応を決めます」という一元的な対応部署、窓口が決まっていたら、どんな場合でもやりやすいだろうと常に感じます。

桑江:企業によっては部署横断的な危機管理室のような組織を設置するケースも出てきていますね。

古田:大企業の伝統的なPRの考え方には「メディアが報じてから」というところがありますが、これが第1報を遅らせる原因になりがちです。「新聞もテレビも週刊誌も動いていないから、まだ大丈夫」と思っても、ニュースになってしまったときはもう手遅れなんですよね。

桑江:ファクトチェックの際に使っているツールや気を付けていることはありますか。

古田:パッと見て驚くようなニュースがあったら、そのツイートのリプライを見てください。怪しい情報であれば大体、「その情報は怪しい」とリプライしている人がいます。
特に1,000リツイートを超えるくらいの投稿になると、必ず誰かが「それは怪しい」と声を上げてくれているので、そうしたニュースに関してはすぐにリツイートなどをしないことです。
リンク先のメディアを見て、しっかりした運営元もないような零細ブログだと思えば、ほぼリツイートしない方がいいと思います。