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ウェビナーレポート:【第3回ウェビナー】アフターコロナの世界~SNS炎上の危機管理コミュニケーション~

開催日時:2020年05月27日(水) 12:00〜13:00(11:45~入室開始)

「コロナ禍の収束後」にポジティブな関心

桑江:新型コロナウイルスの影響もあり、SNSの炎上はさらに増えていくとみられています。2020年4月の炎上件数は246件で、2019年1月の集計開始以来、最多となりました。
「アフターコロナ」というキーワードが含まれるツイートの件数も47都道府県に緊急事態宣言が発令された4月7日と、39県で宣言が解除された5月14日に増えています。
これは「コロナ禍が終わったら何をしようか」と考える人が増えたのが要因でしょう。
アフターコロナという言葉自体が「コロナ禍の収束後」という希望的な意味を含むため、ポジティブな内容の投稿が多いのですが、実際にアフターコロナの世界はどうなるのでしょうか。
働き方の観点で言えば、リモートワークの普及・定着が大きな変化として表れています。どのアンケート結果を見ても特徴的なのは、リモートワークが「定着する」「定着してほしい」という意見が過半数を占めているということです。

半沢:仕事、勉強のオンライン化は、もう引き返すことのできない大きな河を渡ったと思います。
リモートワーク、オンライン授業の一部を効率的にできることが分かった中、もっと時間を有効に使いながら自分の生活をエンジョイして豊かさを享受し、社会に貢献していこうという世の中に入っていくのではないかと思います。

桑江:インフルエンサーに多い自営業、フリーランスの方々も、より活躍できる世の中になっていきますよね。

半沢:自由度が増えるのではないでしょうか。世の中の流れを見て、どうしたらもっと良くなるのかをリサーチする時間をより多く取り、社会、企業様のために活動できる時間、場が増えると予想しています。

桑江:シニア層も、ネット通販・SNS利用者が増えているという調査結果が出ています。これまでは不慣れだったとしても、「便利だ」と活用したサービスは「コロナ禍の収束後も活用する」という意見が多くありました。
コロナ禍の前はオフラインのシニア対策に力を入れていた企業も、オンラインにシフトしていくべきではないかと思います。

半沢:コロナ禍の中では国、地方公共団体もネット通販の利用を推奨しています。急速に利用が伸びているのは、新型コロナ感染を心配して外出を控えているシニアの方々。私が関係している企業のEC販売の利用も1年間より4倍も増えています。
シニアの方々は住所や名前など、もろもろのデータのレジストレーション(登録)、決済が大変だと感じてネット通販を敬遠していたのですが、それでも登録をして商品を購入しようという動きが広がっています。

社会のストレスを反映した誹謗中傷、炎上に備える

桑江:一方、SNSには怖さもあります。先日、テレビ番組に出演していた女子プロレスラーがSNS上で誹謗中傷を浴びたことで自殺されました。プロレスファンである私自身も、非常に大きなショックを受けています。
誹謗中傷は番組内での言動を非難する内容で、直接本人の目につく形で書き込まれていました。これをきっかけに再発防止に向けた法整備が進むとは思いますが、非常に痛ましい事件でした。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200525/k10012443661000.html(現在はリンク切れ)

半沢:本当に残念な事件だったと思います。これを機に誹謗中傷や匿名のツイートの取り扱い、発信者の開示法制に関する論議が深まり、良い方向に進むのではないでしょうか。
インフルエンサーの方々も、企業様のために良かれと思って発信したことが、あらぬ誹謗中傷を受けてしまうこともあります。
我々がいつも話しているのは、何かあったときにすぐ相談できる、信頼できる人を見つけておきましょうということです。
ソーシャルの世界と対話をしながら、そのトレンドに乗って行動することは大切ですが、誹謗中傷は自分が悪くなくても起こるリスクがあります。
どんなに注意していても防ぎようがない側面もあるので、信頼できる人やデジタル・クライシス対策の専門会社と密に連絡を取ることが大事です。

桑江:SNSの影響の大きさを表す事象としては、「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグに賛同する投稿が900万件を超えました。
SNS上では、著名人の方がこうした活動に参加するケースも増えている印象があります。

※出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/145b1cc0ad3b849734ff02f59253d47e50bcb36b?page=1(現在はリンク切れ)

半沢:メガバンク出身の立場で言うと、芸能人は所得額が毎年変わるので、ご融資するのが非常に難しい相手です。彼らは華やかな世界にいるように見えますが、コロナ禍で企業CMなどが減り、YouTubeなどでの活動に流れてきています。
自営業の方々を含めて本当に困っていて、ソーシャルリスニングをしていると「コロナ禍で死ぬのか、経済的困窮で死ぬのか」といった意見が多いと感じました。
誰もが自粛をしたくてしているわけではありませんので、政府に対する「経済的な対策が不十分だ」という怒りが、検察庁法改正案に抗議する動きとして表れたのだと思います。

桑江:そのようなストレスに満ちた世情を踏まえ、企業のSNS運用も注意しなければなりませんね。まずは、企業として発信しているという立場を忘れないようにすることが大事です。
例えば、「いいね!」ボタンは気軽に押しがちですが、押したという情報自体が誰にでも分かってしまいますし、公式アカウントが偏った内容の意見に賛同したと批判されて炎上した事例もあります。
また、モラルに欠ける発言、差別的な表現は避けるべきですね。コロナ禍で気が立っている方々が多い状況では、これまでなら問題のなかった投稿にまで噛みつかれる可能性があります。
企業アカウントの発言というだけでも「上から目線だ」と思われる可能性があることに注意を払わなければなりません。

新たな生活様式を踏まえたSNS運用ポリシーが必要

半沢:SNSの利用状況は本当に大きく変わっています。
あるSNSマーケティング会社が2020年4月に実施した調査によると、新型コロナの感染拡大でSNSの利用が「増えた」と回答した人の割合は34.5%に上りました。
SNSユーザーの裾野が大きく広がっている中、利用者の94%は企業活動に肯定的な意見を持っていることも分かりました。
「トピックや商材に関わらず、プロモーションを自粛すべきだ」という人は6%にとどまっているので、企業がSNSを使ってはいけないという風潮が強いわけではありません。
「SNSが大好き」という人だけではない利用者の割合が増え、以前と比べて投稿内容も中立的になってきています。
我々のビッグデータでも、SNSユーザーは社会経験が豊かな40代、50代のアクティブ化が顕著で、バランス感覚の取れた論調が増えている印象です。

桑江:なるほど。

半沢:企業のSNS利用に否定的な6%の回答者のうち、20%はコロナ禍の中での便乗商法や月額サービス「休会」非対応など企業のサービス提供方針への反発、不満でした。
さらに、16%は自社内の新型コロナ感染者情報の非開示、テレワークをはじめとする新型コロナ対策の不徹底、パート・派遣社員への対策不足、ホームページなどにおける休業や時短営業情報の非表示といった企業メッセージへの不快感で、これらが炎上につながっています。

桑江:万が一炎上した場合は、自己判断で削除や謝罪をせず、まずはしっかりと会社に相談して専門家などの判断に委ねることが必要ですね。
投稿を削除してもインターネット上には残ってしまいますし、それ自体が「隠ぺいだ」と言われてしまうことも起こっています。

半沢:新たな生活様式とトレンドを踏まえたSNSの対応方針・運用ポリシーに基づき、行動指針を守る姿勢やプロモーション活動を打ち出すことが必要です。
これまでの時代は一部のマニアの方々がSNSをリードしてきましたが、それ以外の人々の情報の伝達・収集にも使われ始めています。
そうした利用者層は常識的な人も多いことから、今までの対応方針・運用ポリシーとは違う、新しい時代のものを一からつくり直すという感覚でいいのではないでしょうか。

桑江:運用ポリシーとルールを定めましょうという考え方は従来と変わりませんが、コロナ禍の中では、より厳密に注意をする必要があります。
企業アカウントの炎上が増えることが想定されるので、しっかりとアンテナを立ててウォッチしながら他社の炎上事例などを踏まえたものを自社に取り入れることが求められます。数年前に策定したままであれば、コロナ禍を機に見直すことが重要かと思いますね。

半沢:新型コロナ対策と経済困窮対策は、ヤジロベエの重りのようなものです。これからも左右に振れ続けると思いますが、世の中の大きな流れがどちらに傾いているのか、常にアンテナを立てて見極めることが必要でしょう。
タイムリーで的確なソーシャルリスニングは専門家にお願いするか、そうした方のアドバイスを受けながら社内にチームを設置することで対応できます。リスクマネジメントに向けては大きなトレンドを踏まえ、常に消費者に寄り添う姿勢を見せることが大切です。
早期に情報を収集して分析し、対応するタイミングとそのときの表現が、炎上を防げるかどうかの大きな分岐点になります。
謙虚に下からの目線で表現してください。そのようにして日頃から育成した自社のファンがいれば、万一のときに皆さんを応援してくれることも起こり得るのです。

桑江:新たな生活様式、トレンドを踏まえてしっかり見直し、リスクマネジメントを含めて対応していかなければならないということですね。