レポートCases / Reports

DIGITAL CRISIS RESEARCH INSTITUTE

ランチタイムウェビナー

第65回『第31回~60回ランチタイムウェビナー総集編(後編)』

開催日時:2021年09月08日(水) 12:00〜13:00(11:45~入室開始)

パネリスト

桑江 令(くわえ りょう)

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 主席研究員。 デジタルクライシス対策の専門家として、NHKのテレビ番組に出演したり、出版社でのコラム、日経新聞やプレジデントへのコメント寄稿も担当。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

前薗 利大(まえぞの としひろ)

シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 研究員 2011年、シエンプレ株式会社に入社。 桑江の元で多くの案件に携わり現場を経験した後、 代理店担当としてアサツー・ディ・ケイなどとの協業で、 官公庁の他、日本を代表する大企業のリスク対応を多く担当している。

-アクティブサポート

カスタマーサービスとSNS部門の連携がカギ

※出典:https://www.zendesk.co.jp/blog/activesupport-jp/
https://gaiax-socialmedialab.jp/post-30685/

桑江:後編のテーマはまず、「企業が実践するファンづくりと炎上対策」です。
田代武志氏(ネスレ日本株式会社VOC&SNSマーケティングサービスユニットマネージャー)に、SNS上で自社のサービスや商品への不満、意見を述べているユーザーを見つけてアプローチするアクティブサポートの取り組みと炎上リスクへの対応についてお話しいただきました。
最近は企業の対応や製品などに問題があると、不満をまとめたブログやまとめ記事がネット上ですぐに作られ、悪い評判があっという間に拡散されてしまいます。それらを払拭するのは大変ですが、こまめに対応することで大事になる前に問題を解決できるわけです。
一方、数万人ものフォロワーがいることがある企業の公式アカウントから急に反応されたのを恐怖に感じ、自分のアカウントをブロックしてしまった事例も存在します。そのあたりも意識し、声をかけていいかどうかを判断しなければならないといった点に注意しなければなりません。

前薗:私もアクティブサポートをお手伝いさせていただいている案件を担当していますが、社内の対応者をきちんと決めることが重要ですね。対応者が定まっていなければトーン&マナーや表現、方針の不一致などによって対応そのものが炎上してしまう可能性があります。
ガイドラインやマニュアルに則り、投稿できる人をしっかり決めた上でコミュニケーションを取るべきでしょう。

桑江:また、SNS上にクレームや批判などが書き込まれていた場合は、お客様相談室などのデータベースと照合し、SNSに投稿する前に本人から連絡がなかったかを確認した方がいいですね。お客様相談室とSNSの担当者が情報共有を密にするということです。
弊社がモニタリングさせていただいている企業様については、お客様相談室に気になる問い合わせなどがあれば我々のモニタリング担当者に共有していただき、SNS上に類似の投稿がないかしばらく注視するようにもしています。
もちろん、その逆も然りです。SNS上に気になる投稿があれば、お客様相談室にエスカレーションするといった連携が重要になると思います。

前薗:アクティブサポートはコールセンターと二人三脚でできるかどうかが重要です。SNSで対応して終わりではなく、コールセンターにも電話が入る可能性があるということは必ず念頭に置いていただく必要があるでしょう。

桑江:ネスレ日本の場合、企業公式のカスタマーサポート用アカウントと各商品のブランドアカウントの2つを使い分け、アクティブサポートに取り組んでいます。アカウント名も分かりやすく、担当者の名前も明記されていますね。アカウントの先に人がいるということを伝える上で非常に有効なので、スタッフを固定できるならそうするのも1つの方法でしょう。
SNS上では製品の不具合についてヒアリングして対処を案内するだけでなく、改善しなかったときの部品交換にも対応して問題を解決しています。

前薗:非常に先進的な事例なので、アクティブサポートをこれから導入しようという企業がここまで体制を整えるのはかなり大変かと思います。まずは、自社でどこまでやるのかを決めるのが大事だと思いますね。

-アンバサダー・マーケティング

ステマのリスクに注意すれば、効果的な情報発信が可能

※出典:https://find-model.jp/insta-lab/different-ambassador-and-influencer/

桑江:続いてのテーマは、林知幸氏(株式会社ワークマン営業企画部兼広報部部長)にお聞きした「企業が実践するファンづくり」です。アンバサダー・マーケティングをどう活かすかという観点でお話しいただきました。
ワークマンには製品の情報発信だけでなく、開発にも携わる約40人のアンバサダーが所属しているということでしたが、金銭のやり取りは一切発生していません。アンバサダーに報酬を支払っているとなるとステルスマーケティングの問題も出てきますが、そのような事態を回避できるということです。
SNSで情報を発信する際はアンバサダーを名乗ってもらうのが前提なので、さらにリスクヘッジができていると言えます。

※出典:https://pr-genic.com/4039#i-8

前薗:「アンバサダー・マーケティングは良いものだ」と再認識していただいた方も多いと思いますが、アンバサダーに関する日本での定義はまだまだ曖昧です。
我々がチェックしている炎上仕掛け人の中にも、アンバサダー・マーケティングにおけるSNS投稿の表現や企業との関係性が明示されているかどうかという視点でステマをチェックしている人がいます。
アンバサダー・マーケティングの手法だけを見て安易に飛びつくのではなく、リスク面やデメリットもしっかり押さえておく必要があるでしょう。それで失敗して指摘を受けたケースも結構見ていますので。

桑江:昨今はステマに注がれる目が厳しさを増しており、アンバサダーに対する製品や情報の提供も便宜と捉えられてしまう可能性があります。つまり、「お金が発生していないから大丈夫」ということでもないのは確かですね。
製品を無償でプレゼントすることも便宜に当たりますので、気を抜いてしまうと指摘を受けることもあり得ます。

前薗:アンバサダーが、企業とどのような関係性で情報を発信しているかが重要ということですよね。

-ジェンダー炎上

原因はマーケティングのミス キーワードは「半歩先」

桑江:トイアンナ氏(ライター/起業家)の「ジェンダー炎上」も面白かったですね。
ジェンダーは性別の観点だけで捉えてしまいがちですが、すべての消費者は本来、怖い存在であるということです。消費者は隠れた本音(インサイト)を刺されないと商品を買わないので、インサイトを見つけてたっぷりのオブラートにくるみましょうということでした。

前薗:そうですね。

桑江:消費者は、愛用していた製品が自分以外をターゲットにすると嫉妬するというお話もありました。特に、今までの属性と真逆のターゲットに売り込もうとすると、そのブランドを嫌悪することになるため、コア&モア(既存顧客を維持したまま新規顧客を得る)戦略は、既存顧客の目に見えないところでやろうということでした。
また、伝えたい言葉には常に「なぜ信じるに足るのか?」を添え、しっかりアピールすべきというアドバイスもありました。

前薗:「ジェンダー炎上」は男女の性差がどうこうという話ではなく、基本的なマーケティングのミスが原因であることが多いという指摘も印象的でした。

桑江:瀬地山角氏(東京大学教授)にも、「ジェンダー炎上」をめぐるCMの事例について解説していただきました。何よりも、固定的な性役割分業を肯定したり助長したりするような演出はNGだと。ジェンダー問題は現状を追認するから批判されるため、キーワードは「半歩先」だとおっしゃっていました。

前薗:その「半歩先」は、社会の中にあるということでしたね。

-炎上対策・危機管理

事態の深刻化を防ぐのは迅速な初動対応

桑江:松尾裕二氏(チロルチョコ株式会社代表取締役社長)の「企業が実践している炎上対策」も興味深いお話でした。
炎上トラブルにおける事実関係の精査段階でユーザー側(発信者側)の勘違いだと判明しても、相手を否定しないのがポイントだとおっしゃっていましたね。
また、エビデンスとして活用できる第三者のサイトやレポートなどを用意しておき、しっかり利用すべきということでした。問題の発見からそれ以降の対応を迅速に行うことの重要性も強調されました。

前薗:自分たちの非を認める点はきちんと探りつつ、エビデンスに基づき「100%は悪くない」というスタンスでコメントを発表するのも見え方が良くなる方法だと思いますね。

桑江:最後は、赤石晋一郎氏(ジャーナリスト)による「企業における『週刊誌的危機管理論』」です。
不祥事や事故の調査結果は段階的に明らかになることが多いかと思いますが、初動のコメントとしては「今は調査中で、いつ頃までに事実関係が分かる予定です」というスケジュールを示していく方法が推奨されます。
基本的には12時間とか24時以内に記事化されるのを、いかに抑えられるか。そのタイミングまでに企業側が「こう動いています」ということをアピールしておかないと、一方的な記事を書かれてしまいかねません。
企業としては初報をいかに早くリリースできるかがポイントですが、初報のパターンは限られます。まずは「調査中です」という文書を出し、長引きそうであれば特設ページのサイトを作ってアップしていくという対応が望ましいでしょう。

前薗:皆さんは無視されることを嫌がるので、それに対するノイズを増やさないためにも第一報のスピードは重要ですね。発表が遅いという状況すら炎上の種になってしまうということを念頭に置いていただいた方がいいと思います。

桑江:「調査中」というのも問題に対応しているということですから、それをしっかりと公表しましょうという話ですね。