インタビューInterview

DIGITAL CRISIS RESEARCH INSTITUTE

第2回JDCアワード

【第2回JDCアワード】【優秀賞受賞インタビュー】株式会社不二家様

「チョコまみれ」が大ヒット、ゆるキャラ「まみれさん」が話題に

シエンプレ株式会社(以下、シエンプレ):2021年は御社の「カントリーマアム チョコまみれ」が、ゆるキャラの「まみれさん」と共に大ヒットしました。1984年の発売から35年以上を経過した中、ゆるキャラの採用は若年層の獲得を目指した施策だったと思いますが、広報としてはどのような戦略でヒットさせようとお考えだったのでしょうか。

株式会社不二家 土橋様(以下、土橋様):弊社のロングセラー商品「ホームパイ」が発売50周年を迎えた2018年、「ホームパイのみみ」という商品を発売させていただきました。その際、「イパムーホ」というゆるキャラをパッケージに描いたところ、商品と共にSNSで話題になったことから、今回もその手法を踏襲した形です。
「カントリーマアム チョコまみれ」は、お取引先ともお話しさせていただいた中で生まれた商品で、特段のプロモーション計画があったわけではありません。商品の詳細についても限定販売だったこともありあえて発信しませんでしたが、お客様が自然発生的にSNSなどで話題にしてくださいました。
ミドルパックの個包装を並べたらストーリーになるという仕掛けも、あえてアピールはせず、お客様に仕掛けに気づいた時の驚きと、遊び心を楽しんでいただければと考えています。

株式会社不二家
広報IR部 広報室
土橋 美紀様

シエンプレ:当初は、学生服を着たキャラクターを採用する案もあったとお聞きしました。

土橋様:「カントリーマアム」はもともと女性ユーザーが多いこともあり、「チョコまみれ」は男性への訴求も視野に入れていました。ただ、学生服姿のキャラクターだとターゲットが狭まり過ぎるだろうと判断し、ターゲット不明なゆるキャラの「まみれさん」に行き着いたということですね。

情報発信を抑える戦略で「謎キャラ」の神秘性が向上

シエンプレ:「ホームパイのみみ」の発売時も、メーカーとしての発信はされなかったのでしょうか。

土橋様:最初は特にしていませんでしたが、SNSなどで話題になったこともうけ、「イパムーホ」のキャラクターを活かしたシュールなショートストーリーをTwitterで発信しました。

シエンプレ:なるほど。通常なら、社内から「SNSで積極的にキャンペーンなどを仕掛けよう」という声も出てくるのではないかと思います。あえてそうされなかったのは勇気がいることだったと拝察しますが、「もっとSNSを使おう」という意見はありませんでしたか。

土橋様:もちろん、広報としてTwitterの担当者に「どんどん情報を発信した方がいいのでは?」と投げ掛けたこともあったのですが、「『謎キャラ』のようなインパクトがウケて自然に盛り上がっているから、しばらくは静観した方がいい」という反応でした(笑)。

シエンプレ:SNSユーザーや御社のファンの皆さんが「謎キャラ」を楽しんでいる状況をキャッチし、それを的確に生かしたプロモーションを展開されたということだと思います。しっかりとしたソーシャルリスニングができていたからこそ、あえて発信しないという判断ができたわけですね。

土橋様:そうですね。お客様の評価・反応は普段からTwitterなどのSNSで拾わせていただき、POSデータも活用しながら把握しています。
それらの分析を踏まえ、フレーバーなど新たな特徴のある商品を定期的にリリースし、お客様にも「このシリーズに、こんなユニークなお菓子が登場した!」と盛り上がっていただいています。

Twitterでのコメントを避けるリスクマネジメント術

シエンプレ:情報を発信される際、さまざまなSNS媒体をどのように使い分けてらっしゃいますか。

土橋様:基本的には、どの媒体でも情報は漏れなくお伝えしているところです。ただ、媒体ごとにメインユーザー層の世代などが異なるため、投稿文のトーン&マナーや重点的に発信する情報を少しずつ変えるように意識しています。
例えば、弊社のイメージマスコット「ペコちゃん」のファン層はFacebookのユーザー層とかなり一致しているため、関連するフェアなどの手厚い情報発信が外せません。
一方、「まみれさん」のようなゆるキャラをめぐるコミュニケーションへの反応は、Twitterの方が良さそうな気がします。

シエンプレ:企業の公式アカウントの炎上なども相次いている中、SNS運用で工夫されているリスクマネジメント術があれば、お聞かせください。

土橋様:予期せぬ受け止められ方での拡散や炎上、発信内容の誤りなどは、日頃からすごく気にしています。
投稿に関しては「プライベートの端末は使わない」といったマニュアルを共有し、広報部内と他の部門の複数の担当者が必ず内容を確認してから公開する仕組みです。
発信した内容が間違っていた、あるいは炎上した場合も投稿を削除せずに静観し、引用リツイートや返信で修正してお詫びするといった形を取っています。

「ペコちゃん」ファンの拡大に向けたコミュニケーションも強化

シエンプレ:TikTokやYouTubeなど、動画によるコミュニケーションを活発化させるプランはありますか。

土橋様:社内でも「動画を活用した方がいい」という意見は上がっており、費用対効果も検証しながらより良い方法を慎重に模索していこうと考えています。
SNSではより多くの世代の方に関心を持っていただけるようなキャンペーンの情報など、お客様にさらに寄り添う発信を充実させていくつもりです。
「ペコちゃん」のファン層拡大に向け、若い世代の方々とのコミュニケーションにも力を入れていきたいですね。

シエンプレ:2021年は、東京駅にオープンした期間限定のポップアップショップ「カントリーマアム チョコまみれランド」が話題になりました。2022年も、さまざまな企画を考えてらっしゃるのでしょうか。

土橋様:「カントリーマアム チョコまみれ」をご愛顧くださり、本当にありがとうございます。さらに多くの方々に楽しんでいただけるように、いろいろな商品を企画中です。
引き続き「まみらー」の皆さんに喜ばれるよう、楽しく、おいしい商品をお届けしていきたいと思いますので、今後とも「チョコまみれ」をよろしくお願いいたします。