【第1回JDCアワード】【優秀賞受賞インタビュー】アパグループ株式会社様
2020年世界を巻き込むCOVID-19が社会に混乱をもたらした。コロナ禍において政府の要請を受け、感染者の療養施設としてホテルの1棟貸しを引き受け、人々の注目を集めたアパグループ。
2020年4月、政府要人から同社代表に宛てた電話が鳴った。
「医療現場の逼迫した状況を打開すべく、お力を貸してほしい」と相談を持ち掛けられたことが事の発端である。
それまでも様々なお客様に対するサービスの拡充を試みてきた中、新たな分野を請け負う重責である。恐怖や不安が募る社会では感染者のみならず、医療従事者への偏見も沸き起こる最中判断を迫られたのである。
「もちろん社内にも一部不安の声はありました。けれども、対象施設における勤務が可能なメンバーを公募したところ、予想をはるかに上回る応募となりました。決行できた背景には当社従業員の存在があります。私の思いに共感し、今なお力を尽くしてくれていることを心から感謝するとともに、誇らしく感じています」
当時を振り返り、思いを打ち明けてくれたのは、アパグループ株式会社 代表取締役社長 元谷 一志氏である。
むろん本業も経営が厳しい中の決断であり、体制を整えることが急務であった。
報じられない第一線
感染者の受け入れに際しては従事するスタッフに感染リスクがないよう、専門家の立ち合いのもとゾーニング(感染領域と非感染領域の区分け)を行った。
感染対策の徹底ぶりにお客様から驚きの声を頂くことも多かったという。様々なシーンにおける感染対策を、一般顧客から高く評価されたことに心から安堵したのは言うまでもない。図らずも社会におけるアパグループの存在価値を、目に見える形で発進する絶好の機会となった。
デジタルメディアを通じて、多くの応援メッセージが寄せられたことは想像に明るい。
アパホテルを利用された感染者を対象に行ったアンケート調査においても、快適に過ごせたという回答が大半を占めている。「第二の自宅の様に使っていただこう」と思いを込めて準備しているアメニティをはじめ、大型テレビや無料配信チャンネルのバリエーションの多さ、バスルームに至るまで孤独な時間を緩和してくれる要素となった。
また、それまで業務効率を高める意図で設置していたデジタルインフォメーション等のサービスが、感染対策にも大いに活躍することとなった。
感染対策の徹底ぶりを高く評価したのは行政機関も同様である。これまで30棟ほど貸し出しており、今なお23棟程度貸し出し中である。スペイン風邪同様、足掛け2年は感染者のための施設が必要になることを見越し、全国の自治体から要請があれば順次対応できる状態の維持に努めている。
結果的に、今までアパホテルを利用していなかった新規顧客の取り込みが加速度的に進み、一部、活気を取り戻しつつあるという。
イレギュラー続きの情勢にも勝機を見出すアパグループの底力は様々な新しいプランにも見て取れる。短時間のテレワーク利用者やロングステイプランも人気のプランとして定着しつつある。
全てはお客様の安心・快適なひとときのために
一方で、中核事業の導線となるデジタルコミュニケーションの重要性も痛感していると言う。
近年はアパアプリの充実を図り、お客様と直接やり取りができる機会を意識的に増やしている。基本的にはネットからの予約が9割を超える現在、デジタルメディアの充実が差別化につながると考えている。なるべくお客様とダイレクトに繋がることで利益だけでなく、より的確にお客様のニーズをキャッチしたい思いからである。
より満足して頂けるようお客様の声に耳を傾け、新たなサービスに落とし込むことが今や日常となっている。
とはいえ、ネガティブなご意見を頂くこともある。その都度、必要経費は惜しまずに使い、ホテルを利用される方々に安心して使っていただけるよう力を注いでいるという。世界で客室数17位を誇るアパホテルは、いわれのない批判や誹謗中傷のターゲットにも十分なり得る。
「当社においても、今後益々グローバルなデジタルメディア対策が必要になると予測している」と表情を引き締める姿が、頼もしく映った。
変わらない覚悟を胸に、業界の垣根を越えて次々と新たな取り組みで社会を牽引していくアパグループ。時代の風を敏感に察知し、間断なく現場に反映する実行力の高さにも定評がある。
同社の動向は、社会への力強いメッセージとしてこれからも私たちに届き続けるに違いない。