インタビューInterview

DIGITAL CRISIS RESEARCH INSTITUTE

第1回JDCアワード

【第1回JDCアワード】【ボーダーレス賞受賞インタビュー】チロルチョコ株式会社様

「コロナに負けるな!」 全国のお菓子メーカーと夢のSNS企画

シエンプレ株式会社(以下、シエンプレ): 改めまして「ボーダーレス賞」受賞おめでとうございます。

チロルチョコ株式会社 SNSご担当 柳下様(以下、柳下様):ありがとうございます。

シエンプレ:「おかしつなぎ」は80を超える法人、個人の方々との企画でした。これほど大規模なコラボ企画は久しぶりに拝見いたしましたが、これまでも同業他社とのイベントを実施されたことはあったのですか。

柳下様:いいえ、今回が初めての企画です。私は約1年前にSNSの担当に任命されたばかりですので、個人的には菓子業界の方々と面識も交流もありませんでした。「おかしつなぎ」をきっかけに、いわゆる「中の人」と交流するきっかけを頂きました。

シエンプレ:何か刺激を受けたことはありますか。

柳下様:企業様ごとにアカウントの運用方針や色が異なるので、勉強になりました。

シエンプレ:貴重な機会になったのですね。では「おかしつなぎ」の発案者は、どなただったのですか。

柳下様:弊社代表の松尾裕二です。「コロナ禍で暗いニュースがあふれているから、お菓子メーカーとして何かできないだろうか。できればさまざまな企業様に続々と参加していただけるような企画を考えたいね」と申したことが発端です。当時流行していた芸人さんの「一発ギャグつなぎ」を参考に、今回の企画がスタートしました。

シエンプレ:そうでしたか。あの企画を参考にされたものだったのですね。

柳下様:はい。「一発ギャグつなぎ」を参考にする案は、他社様からのご提案だったと聞いておりますが。

シエンプレ:確かにあの頃はテレビを視聴すること自体、嫌になりそうな日々でした。暗いニュースばかりだった分、御社の企画をありがたく感じました。日頃、SNSの企画はどのように立てられているのですか。

柳下様:私がゼロから考えることは、ほとんどありません。商品発売前に、開発企画室の中で「こんなキャンペーンをやろうか」といったアイディアが出てきます。広報手段の1つとしてSNSが選択されてからは、SNSの企画に落とし込むパターンが一般的です。

シエンプレ:なるほど。お菓子は誰からも喜ばれますが生活必需品ではないので、企画内容が重要ですね。

柳下様:そうですね。

シエンプレ:今回の企画で、特に心に残っていることは何でしょうか。

柳下様:当社アカウントに寄せられたコメントをすべて読ませていただき、「こちらこそありがとうございます」という気持ちでいっぱいになったことです。「おかしつなぎ」は限定100名様にプレゼントを贈らせていただきましたが、抽選に外れた方からも「楽しい気持ちをありがとうございます」「チロルチョコさんをきっかけに、知らなかったお菓子メーカーを知ることができました」といった感謝のコメントを頂きました。お菓子業界全体が盛り上がるきっかけになったことを実感できて、とてもうれしかったです。

成功の秘訣は「誰に、何を届けたいのか」を明確にすること

シエンプレ:「おかしつなぎ」は一大イベントでしたが、今後もこのようにボーダーレスな企画を考えていますか。

柳下様:今後も取り組んでいきたいと考えています。数十社という大規模なものではありませんが、「おかしつなぎ」以降も他社様とのコラボ企画は折に触れて実施しています。今(3月上旬)でしたら亀田製菓株式会社様や「おかしのまちおか」を運営されている株式会社みのや様と、3社共同で「お菓子の袋を使ってポーチをつくろう」というキャンペーンを行っています。今後も順次、共同キャンペーンを繰り広げる予定です。

シエンプレ:企業様の枠を超えたキャンペーンの魅力は何だとお考えでしょうか。

柳下様:ビジネスの面で言えば、各社のフォロワー層が違いますので、自社のことを知ってもらえる機会が増えます。そのような点もコラボ企画の魅力だと思います。

シエンプレ:確かに、認知度は格段に上がりますよね。層が違うからこそ、メリットになると。

柳下様:新しいアイディアを持ち寄れるのも魅力ですね。自社では思いつかなかった方法や発想を教えていただく機会になり、とても勉強になりました。

シエンプレ:発想自体も新しいものを得られるのですね。キャンペーンを成功させる秘訣などはあるのでしょうか。

柳下様:「誰に、何をしたいのか」が見えていないと無難な展開になり反応も薄くなるので、そうならないように気を付けています。「おかしつなぎ」は「日本中の人に元気になってもらいたい」という企画でしたから、他社様にも共感していただき輪が広がったのだと思います。「こんな人に、こういうものを届けたい」というように、アプローチしたい相手や目標を決めておくことが必要だと思います。とは言え、当社も失敗してしまうことはありますが。

シエンプレ:失敗されることもあるのですか。いつも楽しそうな印象を受けていますが。

柳下様:楽しいことは楽しいのですが、「おや?」と思うことも少なからずありますので、日々勉強しています。

シエンプレ:さすがですね。「おかしつなぎ」を通じての気付きや学びはありましたか。

柳下様:改めて「お菓子」は必要なものだと感じました。チロルチョコに関するさまざまなエピソードを伺えば伺うほど、人と人がつながるきっかけになっていることが分かりましたので。単価が低い小さなものだからこそ、会社の同僚やお友達に配りやすいようです。「これは絶対に必要なものなんだ」と、工場で働く人間も含めて全社員の自信につながりました。

シエンプレ:会社や商品を誇れる機会はなかなか得られないので、価値がありますね。ところで、業績への好影響はありましたか。

柳下様:正直に申し上げて、ないですね。Twitterの中のムーブメントでしたから。

シエンプレ:そうですか。後から効いてくるのものなのかもしれませんね。

柳下様:好きになっていただけるきっかけになってくれたら、うれしいですね。

投稿文の作成は「素直に真摯に」を意識

シエンプレ:デジタルコミュニケーションの運用方針があれば教えていただけますか。

柳下様:「お客様とのコミュニケーション」を一番大切にするよう心掛けています。例えば、コメントはできる限りお返しし、一方的な発信にならないよう気を付けています。ホームページでの発信と何ら変わらなくなってしまわないように、SNSだからこそできるコミュニケーションを大切にしています。

シエンプレ:素晴らしいですね。投稿文の書き方で工夫されていることはありますか。

柳下様:「素直に真摯に書くこと」を意識しています。基本的には自然体で書いていて、投稿内容で悩んだときはフォロワーの皆さんに「どんな投稿を見たいですか」と伺います。分からないことは聞いてしまいますね。実際に声が多かったものを取り上げて、例えば「来週から工場の中を案内していきます」というように実行していくパターンが多いですね。

シエンプレ:SNSの運用体制は、どうされているのですか。

柳下様:SNSを運用しているのは私1人ですね。松尾の確認が必要と判断した内容のみ、確認してから進める体制を取っています。

シエンプレ:スピーディーな仕組みですね。

柳下様:日頃の投稿は、私自身が確認して投稿しています。炎上リスクはあるかもしれませんが、今のところはタイムリーな運用を優先し、そのような仕組みにしています。

シエンプレ:柳下様は専任ですか。

柳下様:いいえ。営業事務として営業サポートを行いながらです。4月からは、よりSNS業務に専念した部署で引き続き担当していきます。

シエンプレ:お忙しい中、どうもありがとうございます。では、投稿時に気を付けていらっしゃることはありますか。

柳下様:表現の仕方に気を付けていますね。さまざまな方の立場を想定し、不快感を与えないか見直すようにしています。以前は金曜日に「1週間お疲れ様でした」と投稿していましたが「明日も仕事です」と言われる方もいらっしゃいました。土・日曜日もお仕事の方がいらっしゃることは容易に想像できます。ですから今は、「今日も一日お疲れ様でした。休める方はゆっくり休んで、お仕事の方は頑張ってください」と投稿しています。

シエンプレ:そこまで気遣ってくださるからこそ、ファンになられる方が多いのでしょうね。

柳下様:あまり考え過ぎると何も言えなくなってしまいますので、なかなか難しいのですが。

シエンプレ:日々の炎上対策や社内研修はされていますか。当社でもSNS担当ではない方へのマナー研修や、社内マニュアル作成のご依頼が増えています。

柳下様:表現に悩んだときは、近くの席の人に見てもらうようにしています。従業員向けの研修は未だに実施していないですね。新入社員が入ってきますので、何かしなければと思ってはいるのですが。

「毎日当選」のプレゼントキャンペーンでフォロワー倍増!

シエンプレ:過去のSNS運用で、自慢できる成果がありましたら教えてください。

柳下様:2019年10、11月の「巨大クッションプレゼントキャンペーン」が印象に残っています。「コーヒーヌガー」という商品の発売40周年を記念した企画で、当初8万人だったフォロワーさんが15、6万人に倍増しました。賞品の巨大クッションに加え、毎日必ずどなたかが当選する企画内容に興味を持っていただけたおかげか、フォロワーになってくださる方が毎日増え続けました。SNSを使ったキャンペーンは久々でしたが、かなりの反響がありました。

シエンプレ:ものすごい反響ですね。

柳下様:「毎日作戦」は、お客様にワクワクしてもらえるかなと。

シエンプレ:逆に、ヒヤッとされたことはありますか。

柳下様:個人的に公開用や非公開用の実験アカウントも複数持っているのですが、公開してはいけない写真を上げてしまいそうになったことがあります。

シエンプレ:他社様からも、よくお聞きするケースです。

柳下様:より一層、気を付けて確認しなければと思いましたね。

「ファンの方々の声を聞かせていただける場所を増やしたい」

シエンプレ:SNS運用でベンチマークにされている企業様などはいらっしゃいますか。

柳下様:個人的に好きなのは、株式会社キングジム様です。関係する書籍も読ませていただきました。SNSをお客様とのコミュニケーションの場と捉えられているのは当社の方針と似ていますし、日々のツイートもユーモアがあって面白いんです。まるでファンのような気持ちですね。

シエンプレ:SNS上で理想とされるコミュニケーションは、どのようなものだとお考えですか。

柳下様:お互いを尊重し合えると良いですね。顔が見えないからといってストレス発散の場にしてはほしくないですし、情報を発信する側の企業が偉いわけでもありません。1対1という気持ちでコミュニケーションを取れたらいいと思います。

シエンプレ:今後、新たに活用を考えていらっしゃるSNSはありますか。

柳下様:社内で検討すべきことですが、現状で力を入れていくのは引き続きTwitterです。拡散力があって双方向のやり取りができるのに加え、文字だけで情報を発信できる手軽さからもそうなると思います。

シエンプレ:2020年、最も苦労されたことと良かったことは何ですか。

柳下様:今も苦労していますが、140という限られた文字数の中で情報を伝えなければならないことですね。良かったのは、お客様の声を聞けたことが一番です。「おかしつなぎ」は特に反響が大きく、社員のモチベーション向上につながりました。
当社のチョコレートを製造している福岡の工場からも「うれしかった」「(SNSを)毎日見ています」「涙が出ました」といった声が届きました。さまざまな場所から喜びの声が上がってくることに、私もやりがいを感じました。

シエンプレ:最高の成果ですね。2021年、海外でのコラボ企画は何かお考えですか。

柳下様:今のところは、まだないですね。当社は中国のWeibo(ウェイボ)など海外のSNSアカウントもいくつか持っていますので、もしかしたらそちらで何かできるかもしれませんね。

シエンプレ:楽しみですね。SNS運用で目標にされていることがあればお聞かせください。

柳下様:SNSに限りませんが、「ファンの方々の意見をより多く聞かせていただける場所を増やす」ことです。

業界の枠を超えた取り組みを継続

シエンプレ:御社の一押し商品やPRされたいことがありましたら、ぜひ教えてください。

チロルチョコ株式会社 開発部 広報ご担当 川崎様(以下、川崎様):2020年秋から「プチロル」がラインナップに加わりました。通常のチロルチョコの約24分の1のサイズ。チロルチョコ自体も小さなお菓子ですが、それをさらに小さくしました。設備の関係もあり、これまではサイズを変更してこなかったのですが、新たな試みとして発売いたしました。

シエンプレ:さらに小さくするという発想は斬新です。かわいらしさもバージョンアップしていますね。

川崎様:はい。小さくて食べやすい上、1つ1つにチロルチョコのイニシャルが入っていますので、見た目もかわいいですよね。発売当初から大変好評を頂いている商品です。

シエンプレ:テレワークも広がる中、お家時間を楽しく彩ってくれるタイムリーな商品だと感じました。

川崎様:お手頃価格なので、そのまま召し上がっていただいても、お菓子作りのトッピングにしていただいても楽しめるという声が多い、人気の商品です。もう1つは「チロルチョコ<ミニビス>」と「チロルチョコ<ミニミルク>」。チロルチョコを半分サイズにしたものがたっぷり入っています。たべやすいサイズで、リピートされる方も多いようです。

シエンプレ:誘惑されますね。ひと口サイズも魅力的です。それでは最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

柳下様:当社をたくさんの方に知っていただくために、今後も発信してまいります。業界の枠を超えて、さまざまな企業様とご一緒させていただけたらと考えておりますので、ぜひお声掛けください。当社からもさまざまなご相談をさせていただけたらうれしく思います。今後も楽しく頑張ってまいりますので、当社アカウントもご覧いただけたらありがたいです。これからも、よろしくお願いいたします。